2008年11月30日日曜日

日暮里・舎人ライナーの楽しみ方


日暮里ターミナル

 かつては駄菓子屋問屋が立ち並ぶ下町風情たっぷりの日暮里だったが、今や日暮里・舎人ライナーの完成をきっかけにだいぶその姿が変ってきた。高層マンションが聳え立ち、京成電鉄もスカイライナーの160㎞運転を前に駅を大改造し、完成すれば東京国際空港の正面玄関口として、それまでの薄暗いイメージを払拭し、一大ターミナル駅として変貌を遂げるはずである。と言うわけで、鉄路の旅人にとっても日暮里は見逃せない場所の一つなのだ。
 さて、その日暮里・舎人ライナーは東京都交通局が建設した東京でもっとも新しい鉄道の一つだ。陸の孤島と呼ばれた足立区の舎人地域と山手線を結ぶ動脈として計画された。人口は少なくないものの、ニュータウンがあるわけではなく、高規格の鉄道を建設してもその資金を回収することが難しい地域である。新交通システムは、莫大な建設費用を必要とする地下鉄と違い、既存の道路上の空間を有効活用し、タイヤ走行の軽量車両を無人自動運転をさせることで建設費と運行費を大幅に節約する鉄道だ。だからといって安かろう悪かろうではなく、ところどころに工夫があって新交通システムなりの楽しみ方がある。無人運転だからこそ味わえる先頭車両かぶりつきからの風景もその一つであるし、線路のシステムも見逃せない。

ポイントの仕組み

 普通の鉄道は車輪のフランジによってレールに沿った走行をするが、新交通システムの場合は軌道全体が車両を挟み込む形になっていて、喩えは悪いが模型のミニ四駆のような仕組みであり、コースの中を車両がタイヤ走行していると言っても良い。
 注意深く見ていないと気がつかないのだが、分岐部分に緑と赤に塗り分けられた小さな分岐器がある。直進側の時は緑が開き、分岐側の時は赤が開いて車両をガイドする。それに連動して、分岐側の信号が緑色に変わるという仕組みである。舎人ライナーは無人運転だから本来軌道上に信号など必要ないのだろうが、小さく控えめなLED発光の信号機が付いているのは保守要員の便を図ってのことだろう。ホームドアが閉まり、静かにライナーは日暮里駅を出発する。ポイントを過ぎると、いきなり90度進路を変えて次の西日暮里を目指す。新交通システムは道路上を走るので、まるで路面電車のように小回りが利かないと役に立たない。こんなに半径の短いカーブの場合、鉄製の車輪ならキイキイと耳障りな軋み音を立てるものだが、タイヤを履いたライナーは実にスムーズに曲がっていく。当然勾配にもめっぽう強いので、モノレールと同じ様にアップダウンに富んだ場所でも問題ない。普通の鉄道と比べて地形の制約を受けにくい優れた特性を持っている。地下鉄と違って高い位置から町並みを見下ろせるのも、実に爽快な気分にさせてくれる乗り物だと思う。一番の見せ場は、足立小台から扇大橋にかけて隅田川・荒川を越えるところで、荒川に沿った首都高速道路の上を通過するために驚くほどの高所をライナーは通過するので、広々とした河川敷の眺めは勿論のこと、秩父や丹沢の山々や新宿の高層ビル群も一望のもとだ。

沿線

 舎人ライナーは、尾久橋通りに沿って西日暮里からほぼ真っ直ぐに北上し、埼玉県草加市の西、鳩ヶ谷市の南、川口市の東に位置する足立区舎人と結ぶ9.7キロの路線である。京浜東北線と東武伊勢崎線に挟まれたこの地域は、都内でも珍しいほど鉄道に恵まれない地域であったが、地下鉄南北線に直通する埼玉高速鉄道と舎人ライナーの開通で、少しずつ改善されてきた。都心回帰が著しい今、沿線開発はさほど進まないと思われるが、もともと競合する交通機関がないだけに固定客は着実に伸びているとという。無人運転のために増便もたやすく、朝7時台には13本、日中でも8本の列車があって、近郊型鉄道としては★★★級である。住宅地域としてブランドイメージの低い地域だが、着実に発展する可能性を秘めている。

絶景ポイントを発見

 東京に住む人なら誰も一度は車窓から見える富士山の姿にうっとりしたことがあるだろう。東京の東に住む人ならそれに筑波山が加わる筈だ。女体山と男体山という二つの山頂からなる特徴的なシルエットは、周囲に高い山がないだけに単調な関東平野の風景の中で一つのアクセントになっている。もちろん舎人ラーナーからも堪能できる。沿線に高い建物がないだけに、走るライナーからもじっくりとスカイラインが観察できるので、じっと目をこらして見たところ、特徴ある有名な山を発見した。富士山ほどは角が立っていない、すり鉢を伏せたような形の山、こちらは日光の方の男体山である。距離が遠くその姿はとても小さいが、薄く筋状に積もった雪の景色は紛れもなく崩落が激しい男体山の筋模様である。ビルの少ない舎人ならではの日暮里・舎人ライナー随一の絶景ポイントである。

終点 見沼代親水公園

 日暮里から20分で着く終点の見沼代親水公園は、東京の北の外れである。少し歩けばそこは埼玉県。東京都交通局の鉄道がそこに延びることはあるのだろうか。都営新宿線が、一駅伸ばして千葉県の本八幡まで開通したのは、総武線各停や京成線からの乗り換え客を新宿まで速達する戦略があったからであろう。そう考えると、沿線開発がこれからのライナーにとっては遠い先の話になるのではないか。ただ、ライナーの各駅ホームは、車両増結に備えて伸長可能となっている。あせらずゆっくりと今後の発展を見守りたいと思う。(2008/11/30乗車)

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