洒落た駅舎の室蘭駅 地球岬にちなんだモニュメント |
室蘭本線の歴史は古く、明治25年北海道炭礦鉄道によって岩見沢・室蘭(現東室蘭)間が開業された時に遡る。豊富な北海道の石炭を本州各地に積み出す港として室蘭は栄えた。明治42年には室蘭製鉄所も創業して、今日の工業都市の基礎が築き上げられた。東室蘭と長万部の間には山が海まで迫り出す難所があるため、室蘭本線が長万部と結ばれるのは昭和6年になってからだ。全線開通してからは、函館・札幌間の連絡が山越えのある函館本線から平坦な室蘭本線に移っていった。戦前は国策として樺太経営が重視されていたこともあって、函館・稚内間を札幌を経由せずに長万部から岩見沢に抜ける急行列車注1も設定されていたようだ。まさに室蘭本線の面目躍如たる列車だけに、乗ってみたかったものである。
さて、北海道のすべての鉄道を乗り尽くす今回の旅であるが、まずこの東室蘭から始めようと思う。早朝に東京を発ち、新幹線と2本の特急を乗り継いで東室蘭のホームにたったのは、午後4時11分、函館発の特急北斗9号から降りる乗客はそれほど多くはなかった。途中1時間半ほど、函館で昼食のために下車したとはいえ、ほぼ一日中列車に揺られていたことになる。鉄道好きの自分には随分と近くなったなという印象だ。新幹線もなく、青函トンネルもない時代だったら、今頃ようやく青森に着いた頃だろう。東室蘭に着くのは明日未明・・ふうぅ。
雨模様の肌寒い中、跨線橋を渡り室蘭行の普通列車が待つホームへと向かう。待っていたのはキハ40の二両編成だった。電化されてはいても、この区間の普通列車はほとんどが気動車で、札幌行特急は電車が使われている。古い車両を使いまわすJR北海道の倹約ぶりが窺える。
支線内をキハ40が往復している |
(2014/8/25乗車)
翌朝、苫小牧へ
注1)函館・稚内を結ぶ有名な列車といえば、1961年(昭和36年)運行が始まった急行宗谷だろう。1972年、函館・倶知安間に乗車したことがある。急行型気動車キハ56に乗って3時間の旅だった。森駅で駅弁の立ち売りがあり、いかめしが飛ぶように売れていた。函館11:50発、函館本線経由、札幌16:25着、終点稚内には22:42着。当時の多くの列車は函館を中心に各都市に向けて運行されていた。
注2)これだけの大工場があるのだから働く人も多いのではないかと、タクシーの運転手さんに尋ねると、工場は無人化が進み、今では人がいらなくなったので、工業都市は寂れる一方だという。北海道で賑やかなの札幌だけだそうだ。
注3)室蘭は山一つ隔てて工業地帯と自然が並ぶ不思議な都市である。地球岬やそれに続く断崖は絶景で有名だが、後ろを振り返ると工場地帯と住宅街がすぐ近くまで迫っている。近年はそれを逆手にとって観光PRがなされている。室蘭名物で忘れてはならないのが、「焼き鳥」。東室蘭の中島地区には、有名な焼き鳥屋がある。民芸調のクラシカルな店にはジャズが流れ、予約なしでは入れないほどの人気だ。地方都市は道を歩く人があまりいないのに、どこから人が集まるのだろうという活気ある店が必ずある。それを見つけるのも旅の面白さの一つだろう。
注2)これだけの大工場があるのだから働く人も多いのではないかと、タクシーの運転手さんに尋ねると、工場は無人化が進み、今では人がいらなくなったので、工業都市は寂れる一方だという。北海道で賑やかなの札幌だけだそうだ。
注3)室蘭は山一つ隔てて工業地帯と自然が並ぶ不思議な都市である。地球岬やそれに続く断崖は絶景で有名だが、後ろを振り返ると工場地帯と住宅街がすぐ近くまで迫っている。近年はそれを逆手にとって観光PRがなされている。室蘭名物で忘れてはならないのが、「焼き鳥」。東室蘭の中島地区には、有名な焼き鳥屋がある。民芸調のクラシカルな店にはジャズが流れ、予約なしでは入れないほどの人気だ。地方都市は道を歩く人があまりいないのに、どこから人が集まるのだろうという活気ある店が必ずある。それを見つけるのも旅の面白さの一つだろう。
6時28分東室蘭発の苫小牧行に乗る。電化路線だが普通列車のため昨日と同じ気動車キハ40だ。ワンマン列車なのに3両もつながっている。乗客はまばらだ。それにしても思うのは、近頃は都会人の方が早起きだなあということ。通勤時間がかかるからあたりまえだけれど。今は人が少ないからいいものの、この先運転手一人で対応できるのかなあと心配になるが、所詮乗客のほとんどは目的地が同じだから下車駅が有人であれば何の問題もないのだろう。しかも乗客のほとんどは高校生、定期券利用者だから車内改札をする必要もないし、私のような一見さんのために無駄な人件費をかける必要もないのだろう。
ということで、駅に停まるたびに高校生がたくさん乗ってきた。途中に3校くらいはありそうだ。時々高校生が入れ替わる。
今日は山側に席をとる。本線だけに線路状態も良く、快適な走りだ。登別に近づくと、カルデラ状の山のお釜の中だけに雲がたまっている。幻想的な朝の風景である。駅舎は有名観光地にふさわしい重厚な作りで、駅近くには遊園地があって古風な観覧車が行楽地を演出している。その先はやはり北海道、放牧地が続く。昨日と打って変わって青空が広がり、北海道らしい牧歌的な風景が広がってくる。そこに突然、巨大な製紙工場が出現する。駅名は北吉原だ。そういえば、静岡県の田子の浦には製紙工場が集まっているが、駅名は吉原だった。とすれば、これって北海道の吉原の意ではないか。真偽のほどはあきらかではないものの、ひとりそう思って大発見をしたような気になる。興が覚めるのでネットで確認するのはやめておく。
吹き出しそうな樽前山の形 |
列車が苫小牧に着く。下車すると、好天の空のもと爽やかすぎる寒さだ。よく見れば半袖は自分だけ。高校生もサラリーマンもみんな長袖姿であった。上着着用も少なくない。今年の北海道は秋が早いようだ。
日高本線(苫小牧→様似146.5㎞)・・残りあと4路線
工業地帯の中にある苫小牧駅 刷毛で掃いたような雲が秋の 訪れを感じさせる。 |
日高仕様 運転台下と側面中央(右) |
8:00ちょうど、苫小牧をあとに様似に向けて出発する。電化された複線の室蘭本線と並んで3線仲良く7キロ近く直進する途中には苫小牧貨物駅があって、大量のコンテナを仕分けしている。ここからは本州各地(その多くは隅田川駅)に何本もの高速貨物列車が運行されていて、今も貨物輸送は鉄道を支えていると実感する。工場群が続き、上空には車輪を出して着陸態勢を整えた航空機が千歳空港に向かって飛行している。猛スピードで疾走しているにもかからわず、室蘭本線と分かれて最初の停車駅勇払に着くまで12分が経過していた。ここは工場通勤者のために作られた駅のようである。そこから先は緑の大地と青い太平洋とコンテナ埠頭が広がっている。
高い煙突が見えてきた。北電の苫東厚真(とまとうあつま)発電所である。昨日は製鉄所が大きいと感じたが、発電所の巨大さは並大抵ではない。ここは石炭火力発電なのだろう、巨大なあずまやがあって、その下にはきらきら輝いた石炭がうずたかく積まれていた。それをすくうためのブルドーザーが、とんでもない大きさの重機なのだ。石炭の量も半端ではない。埠頭には外国からの石炭運搬船が係留されるのだろう。周囲は緑に囲まれ人が暮らす様子はまったくない。
鵡川駅にて |
茶色い太平洋 |
日高昆布の天日干し |
静内駅にて 苫小牧行(右) |
馬の放牧 |
終点様似 |
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