帯広から新得へ
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早朝の帯広駅 |
8月27日晴れ。今朝の帯広の気温は13度。肌がピンと張り詰めるような清涼感は格別だ。東京でいえば初冬の感じである。人通りの少ない早朝の街を駅まで歩く。駅前はホテルばかりでやや賑やかさに欠けるが、十勝地方の中核都市にふさわしくJRの駅舎はかなり立派な作りで、ショッピング街が東西に分かれ、どちらも小振りながらも地元の人や観光客が利用しやすいように整えられている。帯広名物の豚丼が食べられる店は、さすがにこの時間は閉まっているものの、昨晩は多くの人で賑わっていた。テイクアウトして食べてみたが、豚ロースの焼き肉とご飯に甘辛のタレがからまって、人気の秘密がよくわかった。店によって肉の部位にバリエーションがあるようなので、食べ比べが楽しそうだ。
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よく見ると橋桁には十勝の風景が 描かれている。 |
ところで帯広の駅のすぐ隣にはコンクリート製のなんとも存在感ある斜張橋がある。どうしてこんな大掛かりな?と思うが、それはホームに行くと納得する。幅の広い帯広の道路の上にホームに接した4本の線路を高架で渡すには、構造上橋桁を吊る必要があったのである。市街地のため騒音対策上コンクリート製の斜張橋を選んだのだろう。経年変化ですこし汚れてきたなと思ったら、それは橋桁に描かれた日高の山並みと森林だった。ちょっと申し訳ない気持ちになる。
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ホームに接した斜張橋 列車は札幌行スーパーとかち |
池田からの滝川行普通列車が3両編成でやって来た。またもや高校生列車だ。キハ40は走り始めると排気ガスが車内にはいってきた。体には悪そうだけれど、ローカル線気分が盛り上がる。しばらく高架線が続いていて、帯広の街の広さが実感される。遠くにはこれから向かう日高山脈が連なっている。きょうの車窓風景は右が良いと予想したが、あきらかにこの時間は順光の左がいい。車内が混んできたので移動は諦めるしかない。芽室でまた沢山の高校生が乗り込んできて、私が座るボックス席にも2人の高1生が「空いてますか」と一声掛けてきて腰を下ろした。座ると一人は黙ってスマホをいじり始める。この光景は日本全国どこも変わらないが、驚いたことにもう一人はノートを開いて勉強を始めた。気がついてみるとあちこちで勉強している。感心、感心!
車内の殆どの生徒は同じ学校と見えて似た制服を着ている。半袖シャツ姿、ネクタイ着用派、上着まで着用とてんでバラバラだが、明らかに同じ生地、同じ仕立ての制服である。ここの気候では柔軟性が必要と見える。大半は十勝清水で下車した。
降りる際に「レナ、バイバイ」と言われた高校生は新得までの乗車。残った高校生たちの方は少し行儀が悪いが、先程の高校生が出来が良すぎたのだろう。
新得で高校生が下車してしまうと、車内はガラガラになってしまった。狩勝峠を越えると生活圏が変わるので普通列車の需要は多くない。お約束の車両切り離しが行われ、この先は単行ワンマン運転になる。
日高山脈を越えて富良野へ
たった乗客4名を乗せて列車は出発した。運転手が替わり、明るい真面目そうな人になった。指差喚呼も丁寧に行っている。こういう人にとって見れば、昨今のJR北海道の失態は辛いことだろうなと思う。
新得は2年前に訪れて名物の蕎麦を食べたところだ。見覚えのある駅前風景が懐かしい。ここから落合までの狩勝峠越えは、運転台の後ろやドア窓など、あちらこちらに移動しながら存分に楽しむ。空いているので、人目も気にならない。
<狩勝峠越え>
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切り離し作業を終えて引き上げる作業員 新得駅で |
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新得を出るとすぐにトンネル、入り登りとなる |
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農耕地の中を登っていく |
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風雪除けのフェンスがあちこちに |
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大きく迂回しながら登坂するのできつい坂ではない |
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十勝平野は広大だが、高度感は今ひとつ |
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駅間が長いためいくつも信号場がある |
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新狩勝トンネル新得側入り口 |
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石勝線側出口からの光 |
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落合側出口 |
車窓からは十勝平野が見渡されるが、今ひとつ高度感が足りない。しかし日高山脈を越えていくための大迂回は見どころ十分だ。駅間が長いために随所に信号場があって列車交換が可能となっている。
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幌舞は終着駅という設定だった。 |
新狩勝トンネルは、トンネル内で石勝線と根室本線が合流する珍しい構造になっていて、石狩側には2カ所の出口がある面白いトンネルだ。運転台の後ろからこの構造をしっかり見させてもらった。石勝線側は出口こそ見えないが、外の光が壁を浮かび上がらせている。トンネル内に上落合信号場がある。この辺りの信号場には分岐器上に必ずスノーシェッドが設置されているので、保線の都合上トンネル内に信号場をつくるほうが効率的だったのだろう。
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夕張山地の最高峰。綺麗な
鋭峰が
印象的。 |
落合の次、幾寅は映画『鉄道員(ぽっぽや)』のロケ地となったところである。映画は、架空の駅「幌舞」を舞台に、鉄道一筋に愚直に生きる高倉健が、仕事一筋ゆえに死に目に会えなかった娘の亡霊に慰められながら大往生を遂げる名作だ。それにしてもホロマイはいかにもありそうな名前だが、イクトラはいかがなものだろう。こちらの方があり得ない地名に思えてしまう。
釣り人が楽しむ金山湖を過ぎ、富良野の盆地に入ると正面に見える尖った山は芦別岳で、ここでも車窓は左が美しい。
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ようやく姿をあらわしたものの
山頂は雲の中。 |
右側に席をとったのは金山湖や十勝岳を楽しみたかったからだが、40年前に訪れた時に比べ木々が生い茂った金山湖はなかなか姿を見せず、十勝岳も手前の里山に阻まれてようやく姿を現したのは、最後の最後、富良野到着直前だった。次回乗るなら左だ。
根室本線(島ノ下→野花南13.9㎞)・・残りあと3路線
根室本線には以前から未乗区間が残っていた。富良野の次、島ノ下・野花南間の13.9㎞である。ほぼ全線トンネル区間だ。1991年滝里ダム建設のため新ルートに切り替えになり、旧滝里駅は今湖底に沈んでいる。今回はこのトンネルをくぐりに来たというわけだ。トンネルでは景色も楽しめず、アホくさいと思いつつ、無事完乗!
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釧路行 |
野花南(のかなん)駅で列車交換となる。やって来たのは同じキハ40だが、あちらはとても有名な列車だ。滝川発の各駅停車で、鈍行最長運転時間を誇る2429D釧路行である。滝川を9:37に出発し、釧路に17:39に着く、8時間2分の長旅だ。完乗の満足感よりも、珍しい列車に出会えたことの方がワクワクする。運転距離は308㎞。現在距離として最長鈍行は、岡山から新山口まで走る電車で、316㎞を5時間45分かけて走破する。釧路まで乗り尽くす人は一体何人乗っているだろう。もちろんそんな物好きはファン以外にありえない。
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滝川にて |
芦別からは田園風景が一変して、稲作地帯に入る。滝川に近づくと、正面に暑寒別の山々が見えてくる。あの向こうは日本海だ。なだらかな丸加高原を過ぎ、列車は函館本線と合流してまもなく滝川駅1番線ホームに到着した。滝川は帯広とはうって変わって夏模様。からりと暑い。上空をグライダーが旋回していた。
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