羽後本荘10時47分発の矢島行は、おばこアテンダントが案内してくれる 「まごころ列車」だった。一日14本(上下28本)運転されている鳥海山ろく線の中で、たった1本だけ往復している列車に巡り会えたのは、偶然としか言いようがない注。世の中悪いことばかりじゃない!
2000形 まごころ列車 羽後本荘にて |
子吉・鮎川間の田園風景 |
子吉川に沿って走る |
旧鮎川小学校 |
タブレット交換
先に到着した羽後本荘行から タブレットを受け取る駅員 (黄色いレインコート着用) 列車は3000形 |
<ゆりてつ>は、決して呑兵衛ばかり相手にしているわけではなく、季節の風物詩を載せた七夕列車やハロウィン列車もあるし、沿線B級グルメ列車なるものもあって、アイディアの限りを尽くしている。イベント列車ばかりでなく、鉄道好きに対してもいろいろな配慮がある。おばこアテンダントによる鉄道グッズ販売はもちろん、駅で販売する硬券など、ファンの喜びそうな工夫がある。
タブレットを肩に 掛け、矢島行ホームへ (帰路撮影) |
タブレット交換を見ることが出来るのは、ほぼ中間に位置する前郷駅だ。鳥海山ろく線で列車交換施設があるのはここだけである。羽後本荘や矢島も含めて、前郷以外はすべて片側1線のホームのため、2列車が同時にホームにつけるのはこの駅だけだ。だから全線で同時に運行できるのは2列車で、ケーブルカーのように途中で交換すると考えればよい。
矢島行に渡される 大きめのタブレット |
羽後本荘行が受け取る 小さめのタブレット |
先に触れたように、ここの鉄道員の方々は、このタブレット交換を鳥海山ろく線の魅力の一つだということをよく自覚していて、一連の作業を興味深い見せ物としても乗客たちに紹介していた。これも観光路線として集客しようとする企業努力の一つだ。帰りのことになるが、羽後本荘行の運転士が受け取るタブレットをカメラに収めようとすると、にこっと微笑みながら「はい、撮って!」とばかりに受け取ったタブレットを見せてくれた。そのサービス精神旺盛な姿には感服した。この会社は一丸となって観光客を歓迎してくれている。
終点矢島駅て・・秋田完乗!
秋田杉の美林 |
矢島駅にて |
改札を出ると、今度は売店でお茶のもてなしを受けた。品の良い白髪の女性が、いろいろ世話を焼いてくれる。その奥がおそらく本社なのだろう。「地元の人が好むようなお酒はありますか」と尋ねると、「ここには置いてないんですよ。駅前の広場を突っ切ると蔵元があって、そこで販売しています。美味しいお酒ですから」と教えてくれる。友人はまさに酒豪で、彼が好んで呑んだようなガツン系の日本酒を試してみたかった。
矢島駅全景 |
1500形 |
駅の片隅に最古参の1500系が停まっていた。絵葉書の中の<ゆりてつ>を代表する列車である。更に帰りの列車は赤い2000形だった。在籍するすべての種類の車両に出会うことができた。これで思い残すことはない。
秋田県を走る鉄道にはこれですべて乗り尽くすことができたが、鳥海山が綺麗な時期にもう一度訪れたいものだ。それがいつになるかはわからないけれど、由利高原鉄道鳥海山ろく線は、また忘れられない鉄道のひとつになった。
(2014/8/28乗車)
注)観光客を呼び寄せるための企画列車「まごころ列車」に乗るには、秋田9:42発の普通列車か酒田9:40発の普通列車に乗らなくてはならず、観光客が利用しそうな特急いなほには接続していない。東京からは新幹線こまちに乗っても間に合わない。たまたま青森を早朝に発ち、普通電車を乗り継いで来たら、ちょうど良い時間になったのである。観光客誘致のためなら、運行時間の見直しが必要だろう。
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